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食品産業における製品の品質偽装は、コストを削減する容易な方法であることから、常に大きな問題となりえることが多いと言われています[1]。しかし、もしこれがアレルゲンや他の有害な添加剤の混入であった場合、食品の品質や栄養価の低下以上に深刻な健康問題につながります。

食品の品質偽装を検出することは、その代替品が本来の製品の化学的・物理的特性を模倣するため、容易な作業ではないことが多くなります。食品業界が消費者にとって高い製品品質を保証することができるようするには、原材料や製造工程、最終製品とあらゆる工程において汚染を検出することが不可欠です。

これは、製造プロセスをインラインで常に精度良く計測されることでのみ可能となります。
この技術資料では、メトローム社の2060 the NIRアナライザーを用いた近赤外(NIR)分光法による小麦粉製造工程におけるジャガイモ澱粉混入の存在のインライン計測について紹介します。この2060 the NIRアナライザーは、この用途のために特殊に設計された拡散反射プローブによるジャガイモ澱粉の迅速、試薬なし、非破壊分析を可能にします。その計測結果は迅速に得られ、化学試薬は一切不要です。

小麦は世界的に需要のある重要作物の一つです。統計によると、2021~2022年には7億7800万トン以上の小麦が世界中で生産されました[2]。この小麦粒からは、世界中で消費される主食であるパンの主成分である小麦粉が生産されます。澱粉はパンの中の主要成分であり、焼き上がり形状、内部気泡による食感、及び全体的な香りに大きな影響を与えます。焼き上がり工程中に、小麦粉内の澱粉と生地に加えられた水との間で糊化が起こります。

小麦粒から小麦粉への製造プロセスには、生産する小麦粉の種類(例えば、全小麦粉、精製小麦粉など)に応じて変化するいくつかの調製工程に分かれています。主な工程は「粉砕」であり、「粒」を「粉」に粉砕することが重要なプロセスです。

小麦と同様に、ジャガイモはヨーロッパ、アメリカ、アジアで最も多く生産される作物の1つであります[3]。特に中国では、ジャガイモは主にその化学的性質と栄養価値(例えば、優れた吸水率とそれが血糖を調節するのに役立ちます)のために、重要な食品成分として使われています[3]。ジャガイモ粉は、化学的には小麦粉(すなわち、主に澱粉で構成される)と似ている[4]ことから、ある状況では優れた代替となります。しかし、このジャガイモ粉と小麦粉を見分けることは簡単ではありません。

小麦は、その用途(例えば、小麦粉、ブルグール粉、デュラム粉)によって品種が限定され、需要が大きく変動します。従って、ジャガイモ粉などを混入させて生産コストを下げ、生産量を増加させるような、小麦粉の生産中の不正行為が多くみられました。

しかし、ジャガイモ粉と小麦粉を混ぜると、有益になる場合もあります。小麦粉の主要な蛋白質であるグルテンに対して体質が合わないと言う人もいるからです。

従って、用途(例えば、小麦粉製造業者または食品製造業者)に応じて、交差汚染、混入事故、混入偽装を防ぎ、その製品品質を保証するための、両成分(小麦粉とジャガイモ粉)の含有量を測定する迅速で正確な方法が必要とされます。

通常、サンプルは小麦粉/ジャガイモの粉の配合中に工程(例えば、タンクまたはパイプ)から手作業で取り出し、その後、実験室でオフラインで分析します。

このようにインライン中のサンプル情報から分析結果を得るまでの遅延時間により、作業者が最新の分析結果でない情報により工程調整を行ってしまうという恐れが出てまいります。

近赤外(NIR)分析法は、食品および飼料分野で広く用いられてきた分析技術です[5]。従来の湿式分析法とは異なり、NIR分析法では、化学薬品を必要とせず、試料調製もほとんど必要としません。従って、専門知識のない現場の方でも測定できます。さらに、この分析方法は高速で、分析結果を通常1分未満で得ることが可能です。

2060 the NIRアナライザーのマルチプレクサー内蔵タイプ
図1. 2060 the NIRアナライザーのマルチプレクサー内蔵タイプ

メトローム社のプロセスNIRアナライザーは、プロセスから得られる«リアルタイム»スペクトルデータと従来分析法を比較して、工業プロセスをコントロールする為に要求される必須項目を測定するモデルを簡単に作成することができます。

複数のプロセスポイントでの定期的な測定モニタリングは、混合物の混入の傾向を早期に発見し、迅速なプロセス調整と広範囲な汚染防止を可能にします。これは消費者を保護し、食品のサプライチェーンの完全性を維持するのに役立ちます。製造業者は、2060 the NIRアナライザー(写真1)を用いて小麦粉の製造をより正確に管理することができます。写真1のモデルは筐体に最大5ポイントにマルチプレクサーを内蔵し、最大5箇所の工程管理が可能です。

この用途のために特別に設計されたプローブは、プローブ先端にパージベント(強制排出)がある«スプーン»として使用されます。各NIRスペクトルが測定された後(図2参照)、プローブ内のポートからエアーパージされ古いサンプルを«スプーン»から排出し、新しくクリアな状態にします。

図2. 2060 the NIR(メトロームプロセスアナリティック社の)近赤外アナライザー)で測定した小麦粉配合時のNIRスペクトル

図2に示すスペクトルは、各タイプの混合小麦粉(小麦およびジャガイモ)の0~100%混合の全てのNIRスペクトルを表示しています。このNIRスペクトルを見ただけでは、その小麦粉のスペクトル変動を解析することはできませんので、高度な多変量解析(ケモメトリックス)を用います。

使用される波長範囲は1100~2000nmであり、この波長範囲には、対象混合物の澱粉、水(水分)、蛋白質、糖、及び脂肪に起因するピークが存在します。インライン分析はマイクロインタラクタンス反射型プローブを挿入して、フィーダー/ホッパー内または混合器内で直接、NIRスペクトルを測定することが可能です。

表1. 小麦粉配合工程中のインライン計測するパラメータ

項目 濃度範囲 (%) 精度
小麦粉含量 0–100% 2.5%
ジャガイモ粉含量 0–100% 2.5%

検量線モデルは様々なスペクトル処理・モデルアルゴリズムの中から最適化されました。正しいNIRプローブの取り付け方は、その測定部の先端に十分はサンプル量が接触しているように、位置や角度を選定する必要があり、プロセス工程の理解も必要となります。

小麦粉製造工程のインライン計測にNIR分光法を使用することで、食品業界における製品の品質と安全性を確保するための迅速で非破壊かつ試薬フリーの測定が可能となります。小麦粉に想定以上のジャガイモ澱粉が混入すると、健康上のリスクが生じ、栄養価を損なう可能性があります。

このような食品製造時の事故を検出するには、しばしば伝統的な分析手法が用いられてきましたが、手作業のサンプリングやオフライン分析は潜在的に、遅延情報に基づく工程処理にならざるを得ません。しかし、メトローム社の2060 the NIRアナライザーを用いると、以下のことが可能になります。

製造工程をリアルタイムでモニタリングし、迅速かつ正確な分析結果が得られる。NIR分光法を用いることにより、製造業者は常に最新の情報を得ることができ、交差汚染を防止し、そして製品品質の完全性を維持して、真に安全なものを消費者に供給することが可能になります。

  • プロセスの変動に対する応答時間を短縮できますの で、製品品質の最適化と利益の最大化につながります。
  • リアルタイムデータを利用することにより、プロセスの 最適化(小麦粉/ジャガイモ粉比率など)が可能になり、 投資に対する回収がより早く可能です。
  • 薬品・試薬が不要で操業コストの大幅削減と安全性 が向上します
  1. Rohman, A.; Che Man, Y. B. The Use of Fourier Transform Mid Infrared (FT-MIR) Spectroscopy for Detection and Quantification of Adulteration in Virgin Coconut Oil. Food Chem. 2011, 129 (2), 583–588. https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2011.04.070.
  2. Shahbandeh, M. Wheat - statistics & facts. Statista.
    https://www.statista.com/topics/1668/wheat/ (accessed 2023-07-12).
  3. Tao, C.; Wang, K.; Liu, X.; et al. Effects of Potato Starch on the Properties of Wheat Dough and the Quality of Fresh Noodles. CyTA - J. Food 2020, 18 (1), 427–434. https://doi.org/10.1080/19476337.2020.1768152.
  4. Yánez, E.; Ballester, D.; Wuth, H.; et al. Potato Flour as Partial Replacement of Wheat Flour in Bread: Baking Studies and Nutritional Value of Bread Containing Graded Levels of Potato Flour. Int. J. Food Sci. Technol. 1981, 16 (3), 291–298. https://doi.org/10.1111/j.1365-2621.1981.tb01017.x.
  5. Rady, A. M.; Guyer, D. E. Rapid and/or Nondestructive Quality Evaluation Methods for Potatoes: A Review. Comput. Electron. Agric. 2015, 117, 31–48. https://doi.org/10.1016/j.compag.2015.07.002.
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