危険な状況において、現場での未知試料の同定は重要なカギになり得ます。迅速に、しかし慎重に、その対象物質についてできる限り多くの情報を得ることが不可欠です。未知の試料を扱うときには安全が最優先されます。その物質の有毒性、レーザー光線による発火性、環境への危険性等に配慮する必要があります。専門家からの情報を迅速に得られればいいですが、通常現場にはそのような専門家はいません。
迅速性と安全性の両面から、容器越しに内部の未知試料を同定できれば大きなメリットとなります。ハンドヘルドラマン分析計MIRA DSとインテリジェントユニバーサルアタッチメント(iUA)を組み合わせると、ワンタッチでコンテンツID機能の利用が可能になります。コンテンツIDは容器の内容物と容器の素材を区別して同定する機能です。iUAがMIRA DSに装着することでコンテンツIDの測定プログラムが自動的に起動し、簡単なワークフロータイプの操作モードになります。
このアプリケーションノートでは、容器内容物を同定するための Mira DS と iUA の使用について、ガイド付きワークフロー、コンテンツ ID のスペクトルおよび同定結果の例を含めて説明します。iUAとMira DSを使用すれば、サンプルに触れることなく、数秒で安全な結果が得られます。
3つの焦点距離を識別できるチップを搭載したMira DSでのサンプリングを容易にするユニバーサルアタッチメントです。
厚い瓶やボトル、薄い袋、容器の表面といったどんな焦点距離でも、ユーザーは安全かつ簡単に未知の試料を測定することができます。
表面 ● 焦点距離 < 1 mm
バッグ ●● 焦点距離 ~ 5 mm 袋や薄いボトルの外側から測定
ボトル ●●● 焦点距離 ~ 8 mm 厚いプラスチックやガラスのボトルの外側から測定
内容物や容器の材質をわかりやすく表示
iUAはチップのデザインを最適化することで機能を充実させました。iUAを回転させると、MIRA DSがその焦点ポジションと最適な測定方法を認識し、簡単に試料の同定分析を行います(右図例)。未知の試料にiUA先端を押し当て、「Acquire」をタッチすれば、システムが測定を開始し、数秒で同定結果を表示します。
iUAをMira DSに装着すると、自動的にコンテンツIDの操作手順(OP)が機器上で有効になり、「Change Procedure(手順変更)」をタッチしてコンテンツIDの測定プログラムを選択することができます。
コンテンツIDの操作手順(OP)を指定すると、Mira DSは非常にシンプルな2段階のワークフローでユーザーをガイドします(右の例)。iUAをMIRAにセットして、容器の外側から内容物にもレーザーが当たるように1回目の測定を行います。2回目の測定ではiUAを内容物よりも上の容器にセットします。MIRA DSは、容器とその内容物の両方を数秒のうちに自動的に最適化、平均化、照合を行い、結果を表示します(図4の例)。
スマート測定、iUA、MIRA DSの独自アルゴリズムの強力な組み合わせで価値ある結果が得られます。
- スルーバリアテスト
- 混合物の確実な分析
- 汚染物質の存在下での主要成分の正確な同定
以下の最初の例は、茶色のプラスチックボトルを通して、有効成分を含む約30%w/vのグリセリン(グリセロール)を主成分とする液体混合物(咳止めシロップ)の内容物を確認する例です。
MIRA Cal DS でのコンテンツID の結果では、グリセリンのスペクトル比率が約 41%であったことがわかります。PETEはIllicit(不法薬物)ライブラリ内で相関係数(HQI)0.99と判定されました。実際のMIRA DSでは以下のように結果が表示されます。
コンテンツID の結果の 2 つ目の例は、不透明な白いプラスチックボトルからアセトアミノフェンを分析したものです(下図)。
これは、MIRA DS の混合物評価と組み合わせたコンテンツIDによって、容器の成分であるプラスチックと着色剤(それぞれ HDPE と酸化チタン)を分析できたことに加え、容器内のアセトアミノフェンを正しく識別できたというユニークな例です。すべての成分がHQI 0.99で同定されました。
励起波長 | 785 nm |
---|---|
範囲 | 400–2300 cm-1 |
アタッチメント | iUA |
ファームウェアバージョン | 8.0.1.136 |
ソフトウェアバージョン | 1.1.14 |
レーザー出力レベル | 5 |
積算露光時間 (秒) | 10.0 |
平均回数 | 2 |
ライブラリ | 違法薬物(Illicit) |
しきい値(HQI) | 0.96 |