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アルカリで透析抽出した試料は、そのままではイオンクロマトグラフで測定できません。pHを下げる必要があるため、試料の中和化が必要です。メトロームのイオンクロマトグラフなら中和化の前処理工程を自動で行えます。

シーズン1 その貳拾玖(二十九)

「ご免下さいよ〜。あれ,千駄木のご隠居さん。早いですね。夕方にってことでしたよね!」

「あぁ,音羽の,いゃ,神明町のご隠居。なぁ〜にね。暇なもんで。たまには機械が動いているところを見たくなって,,,隠居しても,昔の気分を味わいたいのですよ。」

「音羽のご隠居さん。今晩は,お二人で一杯ですって?」

「まだまだ糞暑いんで,精を付けなきゃ行き倒れになっちまうってんで,上野の御山の梅川亭に鰻を喰いに,,,番頭さんもどうだい?誘っていいですよね?千駄木のご隠居さん。」

「いいですよ。けど,今いい処なんですよ。例のサプレッサを使うインライン中和って奴を見せて貰ってるんです。なかなか面白いですよ。もうチョイです。一段落したら行きましょう。」

「そうですか,,,私も見たことないんですよ。見せて下さいな。で,試料は何です?」

「どんなもんかは教えちゃくれないんですが,何でも塩基性高分子の透析液だそうです。アルカリで透析抽出した液中の陰イオン測定です。pHを落とさなきゃ測定できないんで,,,」

「ほぉ。うまく行っているんですか?へぇ〜。pH13以上の溶液が中和されて,ppbレベルのイオンが測れるんですか,,,理屈じゃ判ってるんだけど,実際に見せられると凄いね。確実にpHが落ちてるね。何かノウハウがあるんかい?まだ時間かかりそうだから,いつもとは逆に,今日は番頭さんにインライン中和の講義をお願いしましょうかね。ねぇ,千駄木のご隠居さん?」

「いいですね。神明町のご隠居さんの云う通り,番頭さんに講義をお願いしましょう。」

「講義だなんて,,,両隠居を差し置いて,,,う〜ん。じゃぁ,簡単にお話ししますけど,,,」

「ぃよっ!まってました,番頭先生!」

 

ご隠居さん,これで合ってますよね?

このような樹脂を用いる中和は,イオン交換樹脂を充填した固相抽出カートリッジを使ってもできます。例えば,H+型の陽イオン交換樹脂を充填した固相抽出カートリッジに試料溶液を通過させた場合にも上式と同じ反応が起きますので,試料の中和が可能です。けど,固相抽出カートリッジで中和する場合には,何らかの受器,例えばビーカーやバイアル等に受けなければなりませんし,微量イオンの測定の場合にはカートリッジからの汚染や環境からの汚染だって問題になります。特に,塩化物イオン,硝酸イオン,硫酸イオン等は環境中に多量に存在していますので,汚染する危険性は大です。このような問題を引き起こさないために,WMetrohm社ではインラインで中和できる装置を販売してるんです。

インライン中和に用いるデバイスは,基本的にサプレッサと同じで,中和の原理も同じです。

WMetrohm社の中和デバイスには,図1のように3つの部屋・流路が作られています。それぞれの部屋にはH+型の陽イオン交換樹脂 (├SO3H) が充填されています。各流路は順次回転して,吸着 (中和) ⇒ 再生 ⇒ 洗浄 の工程が繰り返されるようになっています。各部屋での中和反応は上式と同じです。一つの試料を中和処理している間に,他の流路は再生・洗浄されていますので,連続して試料の中和処理を行うことが可能です。中和デバイスで中和された試料溶液は,オートサンプラのバイアルで受けることもできますが,直接インジェクターのループに満たすことができます。こうすれば,処理した液を受器に受けたり外部環境に曝すことなくインライン中和ができますし,試料溶液をオートサンプラにセットしておけば全自動の連続インライン前処理-イオンクロマト分析が可能になるんです。インライン中和システムの基本構成は図2の通りで,試料中のイオン濃度が低い場合には,インジェクターに濃縮カラムを付けると高感度分析ができます。最後に,1.0MのNaOHで希釈調製した陰イオン混合標準液の測定例をお見せします (図3)。一目瞭然,効果覿面ですよね。こんなところでいいですかね?

 

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昔は,イオン交換樹脂を直接突っ込んだり,自作の固相抽出カートリッジを作ったりしたけど,樹脂の精製が大変で面倒だったね。けど,こんなに簡単にpHを落とせるんなら,多少はお足を出してでも買いますね。今の世の中,手間賃のほうがとんでもなく高いからね。けど,番頭先生もなかなかやりますな。今の装置のほうはまったく判らんから,これから時々は,WMetrohmさんの若い衆に講義をして貰いましょうかね。さて,夕立は来ないけど,少しは涼しくなったかな?番頭さん,さっさと片づけて「秋バテ」対策に精を付けに行きましょう。千駄木のご隠居さんも行きますよ〜!


※本コラムは本社移転前に書かれたため、現在のメトロームジャパンの所在地とは異なります。

 

 

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