プロセス分析のテクノロジーは、正直なところ最初は筆者にとっても馴染みがなく、異質なものに思えました。初めてプロセスの自動化と聞くと、現代のSF映画のように未来的なロボットが仕事をする姿を想像していました。おそらく同様の印象を持った人も多いのではないでしょうか?
このコラムシリーズでは、不明な点が多い「私たちはあなたのプロセスを自動化します」という表現が実際に何を意味するのかについて、プロセス分析技術(PAT:Process Analytical Technology)が思ったよりもシンプルで、ユーザーに多くの利点をもたらすことを示したいと考えています。
プロセス分析技術(PAT)とはどういう意味ですか?
私はお客様と会話する中でこう答えました:
この言葉は紛れもない事実であり、多様なアプリケーションの可能性を示しています。同時に、今後プロセス分析技術の利用者は、従来の測定技術(例えば、直接測定、TDLAS、GC)に投資するだけでなく、物質特性や材料組成の測定にもますます投資するようになると考えられます。
PAT は、プロセスとその重要なパラメータを分析、最適化し、最終的に制御する役割を果たします。
この制御は、メーカーにおける品質保証とプロセス全体の信頼性に大きく貢献します。
有毒物質が放出され、人々と環境に甚大な被害をもたらした、よく知られた化学災害 (水俣、トゥールーズ、天津など) を振り返ると、重要なパラメータを定期的に監視することの重要性が十分に明らかになります。
監視できる、または監視しなければならない分析対象物のリストは多岐にわたり、市町村または産業排水処理施設による排水の汚染から、医薬品、大気中のガスやエアロゾルに至ります。
Brochure: Applications for Process Analytics – Manual
分析ラボからプロセスへ
製造業やその他の産業プロセスの歴史を考えると、安全対策と可能な限りのコストの最小化に留意しながら、より短い時間枠でスループットを向上させることが最終的な目標であることは明らかです。自動化による迅速かつ信頼性の高いデータ転送による、独立性の確保は最優先事項です。
バリューチェーン全体を通じて経済的に実行可能なプロセスにするためには、最終製品を最小限の原材料とエネルギー消費で、短時間に最高の品質で製造する必要があります。特に24/7 (24 時間365日) のオペレーションでは、原料や中間製品の組成に関する情報(純度や不純物の情報) を得ることが、最適なプロセス制御と信頼性のために不可欠となります。
信頼性の高いプロセス・モニタリングを24時間体制で確保するにはどうすればよいのでしょうか? 実際に3交代制での自社分析ラボを持つ企業は少なく、サンプルはサンプリングしてから暫らく保管され、その後分析されるまで長い時間がかかったり、外部の分析機関に送られたりすることがあります。これには様々なリスクが伴うことになります。
例えば、サンプリングから分析結果を受け取るまでの時間が長いこと(タイムロス)が問題になります。目標濃度または制限値(リミット)からの変動や逸脱に対しては、ある程度の時間が経過した後にしか対応ができません。
更に、作業条件や環境条件は同等ではなく、サンプルに変化をもたらす可能性があります。酸化、圧力、また温度の変化、水分の混入、その他多くの要因が、輸送中、待機期間中、手作業によるラボ分析中に、サンプルの本来の性質を変化させる可能性があります。
メトロームのプロセス分析技術の歴史について詳しく知りたい方は、以前のコラムをご覧ください:
プロセスアナライザー: 24時間自動オペレーション
通常は手作業で行われる分析も、プロセス分析計を使用することで自動化することができます。サンプルは生産工程で重要なサンプリングポイントから自動的に分取され、分析して濃度計算がされます。得られた情報は、直ちに工場の中央制御室のコントロールシステムに転送されるため、滞りなくプロセス制御に反映されます。サンプリングポイントでの分析自動化により、データの精度と再現性を向上させることができます。
具体的にサンプルは、対象のプロセスサンプリングポイントからバルブ、ポンプ、またはバイパスラインを用いたサンプルストリーム(流路)を経由しプロセス分析計へ供給します。各サンプルは、新鮮で性状変化のない、現在のプロセスと同様の状態でプロセス分析装置へ供給されます。プローブは、連続インライン測定のためにプロセスに直接組み込むこともできます。
分析は、ラボで使用されている滴定法(カールフィッシャー水分測定や吸光度測定を含む)、分光法、イオンクロマトグラフィー法、または電気化学測定法などの一般的な分析手法を用いて行われ、個々のアプリケーション要件に合わせてプロセス分析計に最適化して統合されます。これらの分析手法は、組み合わせて使用することができ、1 つのプロセス分析装置システムで複数の測定ポイントを並行してモニターすることができます。アプリケーションに合わせて構成され、拡張可能なプロセス分析計により、安定したプロセス制御のための最適な条件が得られます。
近年、分光法はプロセス分析と最適化の目的で広く確立されつつあります。従来の分析手法とは対照的に、近赤外分光法 (NIR) は、特に分析スピードにおいて多くのメリットがあります。分析結果は数秒以内に得られ、中央制御システムに直接転送されるため、生産プロセスを迅速かつ確実に最適化することができます。化学薬品を使用することなく、非破壊でその場で分析されるため、プロセスの安全性に更なる付加価値がもたらされます。
近赤外分光法 (NIR)についてご質問がありますか? よくある質問シリーズをご覧ください。
Frequently asked questions in near-infrared spectroscopy analysis – Part 1
PATの多くのメリット
プロセス分析技術における自動化は、未来的なロボットとは関係があるわけではありません。むしろ、PATは企業に多くのメリットをもたらします:
- 完全自動で24時間365日プロセスをモニタリングできます。
- 分析結果を中央制御室などにタイムリーかつ自動的にフィードバックし、プロセスを自動的に再調整します。
- 製品品質のばらつきを低減させます。
- 生産をより効率的に行うためのプロセスの理解を深められます。
- 自社の分析ラボ(または外部の受託分析機関)に依存しなくなります。
- 分析結果の完全なデジタル・トレーサビリティが確保されます。
- サンプルの前処理、時間の節約、安全性の向上を含むトータルソリューションコンセプトです。
次回のコラムは?
このシリーズの次回のコラムでは、”インダストリー4.0” に関するデジタルトランスフォーメーション (DX) においてプロセス分析技術が果たす役割をご紹介します。こちらをクリックしてください!
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