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Q1:装置はどのような場所に設置したら良いですか?

A1:直射日光の当たらない,温度変化の少ない場所に設置して下さい。
電気伝導度検出器は温度変化に敏感な検出器ですので,温度変化が大きい場所に設置した場合には,ベースラインのドリフトや変動が生じることがあります。なるべく一定の温度に保たれた部屋 (場所) に設置して頂くことをお勧めします。

環境水レベル (サブmg/L 〜 mg/Lレベル) のイオン濃度を測定する場合には,一般的な空調設備のある実験室環境に設置しても問題ありません。分離カラムや検出部は本体内に設置され一定温度に保たれていますので,室温の変化の影響を受けることはありません。しかし,日中の温度差が10°C以上ある場所に設置した場合には,溶離液の温度変化によりベースラインのドリフトや変動が生じます。特に,ng/Lから数µg/Lレベルの高感度測定を行う場合には,一定温度に保たれた場所に設置して下さい。

また,直射日光や空調の風もベースラインのドリフトや変動の原因となりますので,このような場所を避けて設置するようにして下さい。

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Q2:イオンクロマトグラフのカタログに記載されている『メタルフリー』とはどういう意味ですか?

A2:試料や溶離液等が接する部分に金属材料を使用していないということを意味しています。
イオンクロマトの分析対象はイオンです。イオンを正確に測定するためには,「接液部へのイオンの吸着」や「接液部からのイオンの溶出」がないことが必須要件とされます。もし,このような事態が発生したら,実際の試料濃度よりも測定値が高くなったり低くなったりしてしまいます。

そこで,イオンクロマトの接液部には,PEEK (ポリエーテルエーテルケトン) やフッ素樹脂,セラミックなどの化学的に不活性な素材が使われています。

※HPLCで使われるステンレス材料も耐食性が比較的高いためイオン分析に用いることも可能ですが,リン酸イオンの吸着や,長期使用による錆の発生等の問題がありますので,是非ともメタルフリーの装置を用いることをお勧めします。

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Q3:イオンクロマトはHPLCとして使えますか?

A3:水系移動相を用いるHPLCに使用可能です。
イオンクロマトとHPLCの原理や装置構成は本質的に同じですので,イオンクロマトをHPLCとして使用することは可能です。但し,サプレッサは必ず取り外して下さい。

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Q4:イオンクロマトを新規購入する予定ですが,装置,カラム,試薬以外にどのようなものを用意しておけば良いのでしょうか?

A4:純水製造装置,天秤,体積計,超音波洗浄機,冷蔵庫,ガラス器具等が必要になります。
これらは一般的な化学実験室にすべて揃っていると思いますが,微量イオンの分析を行うためには若干注意が必要です。下記にこれらの機器・器具を選定するための注意事項をまとめておきました。

純水製造装置:
いわゆる超純水製造装置を用意して下さい。 イオンクロマトでは微量のイオンを測定しますので,溶離液や標準液を調製する純水中にイオンが存在していると,正確な測定を行うことができなくなります。そのため極力イオンを取り除いた水 (超純水) を使用しなければなりません。一般的なイオン交換水製造装置や蒸留水製造装置で精製される水中にはµg/Lレベルのイオン (主に,塩化物イオン,硫酸イオン,ナトリウムイオン等) が含まれており,サブmg/Lレベルの測定であっても定量値が不正確になることもあります。 また,水中の有機物がカラムに吸着・蓄積してカラム性能の劣化を引き起こす恐れもあります。この点からも,超純水を用いる必要があります。

天秤:
試料,試薬な等の秤量に用います。0.1mgまで秤量可能な電子天秤を用意して下さい。これに付随して,薬さじ (ミクロスパーテル),薬包紙 (秤量びん) も必要になります。

体積計: メスフラスコ,ホールピペット,メスピペット,メスシリンダ等の化学実験に使用されるガラス体積計が必要です。調製・計量する容積に応じた容量の体積計を用意して下さい。 これらのガラス体積計の規格はJIS R 3505 (ガラス体積計) に規定されていますので,原則としてこの規格に準拠するものを用います。 また,無機イオンの吸着や溶出を防ぐ目的で樹脂素材の体積計を用いなければならないこともあります。上記ガラス体積計に準じた精度を持つものが市販されていますので,必要に応じて用意して下さい。 1mL以下の微量液体の計量には,JIS K 0970に規定されているプッシュボタン式液体用微量体積計 (マイクロピペット) を用いると便利です。可変容量式のものと,固定容量式のものの2種が市販されていますが,可変容量式のものを使用する場合には計量精度を確認の上使用して下さい。 これらの体積計に付随して安全ピベッター,スポイト (パスツールピペット) 等も必要になります。

ガラス器具:
種々の容積のビーカー,ろ過器等が必要です。化学分析用ガラス器具に関してはJIS R 3503に規定されていますが,一般的な化学分析に用いられるほうケイ酸ガラス製のものを使用して下さい。

樹脂製器具・容器: イオンクロマトではイオンの吸着や溶出を防ぐため樹脂製の器具類を用いなければならないことがあります。樹脂製器具・容器を揃える場合には,ポリエチレン製,ポリプロピレン製あるいはフッ素樹脂製のものを購入して下さい。価格や耐薬品製等を考慮すると,汎用的にはポリプロピレン製のものを用意すると良いと思います。 樹脂製器具・容器に付されている目盛りは,一部のメスフラスコなどを除き,おおよその量を示したものですので,目安でしかありません。注意して下さい。

ろ過器:
親水化フッ素樹脂,ニトロセルロース等の材質のメンブランフィルタを用意して下さい。試料溶液のろ過には孔径0.2µm程度のフィルタが,溶離液のろ過には孔径0.5µm程度のフィルタが適切です。またフィルタ径としては,試料溶液のろ過には直径13mmあるいは直径25mm,溶離液のろ過には直径47mmのものが適切です。 溶離液のろ過には,ファンネル型のろ過器を用い,アスピレータ (減圧ポンプ) を使ってろ過をします。試料溶液のろ過には,イオンクロマト専用のディスポーザブルフィルタが市販されています。プラスチック製の注射筒に試料溶液を採り,注射筒先端にディスポーザブルフィルタを装着し,加圧してろ過をします。

その他:
保冷庫 (冷蔵庫): 試薬,標準溶液,試料の保管
超音波洗浄器: 溶離液や試料溶液の脱気,試料の溶解・抽出
pH計,電気伝導時計: 溶離液や試料のpHや電気伝導度の確認
スターラ: 試薬の溶解
小型遠心分離機: 試料溶液中の固形分の分離
その他機器・器具: 恒温乾燥機,恒温水槽,ストップウォッチ
消耗品: ラボ用ワイパー,ティッシュペーパー,ラベルシール等 イオンクロマトはメタルフリー仕様になっており,接液部にはPEEK (ポリエーテルエーテルケトン) やセラミック等の不活性素材が使用されています。これらの素材は,HPLCで汎用的に使用されるメタノール,アセトニトリル,リン酸緩衝液,酢酸緩衝液等で侵されることはありません。従って,逆相クロマトグラフィーや水系サイズ排除クロマトグラフィーに使用することが可能です。特に,メタルフリー仕様は,タンパク質のような金属に対して活性を示す試料の測定には有効です。

但し,ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC) に使用されるクロロホルム,テトラヒドロフラン,N,N-ジメチルスルホキシド等は,PEEKを侵し機械的強度を低下させますので絶対に使用しないで下さい。 耐圧性の面でもまったく問題はなく,一般的なイオンクロマトでは20MPa以上で常時使用しても,液漏れや装置の破損が生じることはありません。また,一部のイオンクロマト (例えば,プロフェッショナルIC850等) では,グラジエント溶出やカラムスイッチング等の分析法を適用させることも可能です。電気伝導度検出器の他,吸光度検出器,電気化学検出器,質量検出器等も接続可能です。

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Q5:イオンクロマトで使用する水はどのレベルのものを使えば良いですか?

A5:超純水製造装置で精製された水を用いて下さい。
溶離液を調製する際に用いる水にイオンが含まれていると,マイナスピークや不明ピークの出現により,測定対象イオンを正確に定量できなくなる恐れがあります。溶離液調製に用いる水は,超純水製造装置で精製された水 (超純水) を用いて下さい。厳密には「超純水」という規格はありません。JIS K 0557「用水・排水の試験に用いる水」にはA1~A4まで4種が規定されており,その規格からはA3以上の水を用いればよいということになります。実際には,超純水製造装置により精製された比抵抗18 MΩ cm以上を示す水を,採取後速やかに使用して下さい。精製された水をタンク等に貯蔵すると,貯蔵中に環境からイオンが混入してしまい,せっかくの「超純水」のレベルが低下してしまいます。

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