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Q16:標準溶液はどのように作るのですか?

A16:純度既知の試薬特級以上の等級の試薬を純水に溶解して調製します。
試薬特級以上の等級の試薬を一定量秤量し,純水に溶解して標準液とします。

標準液は測定対象のイオンを含む酸や塩基を希釈して作成することも可能ですが,通常は測定対象のイオンを含む塩 (粉末) を用います。 塩を使用する場合,測定対象のイオンが目的濃度となるように,対イオンの質量を補正した量を秤量して下さい。また,試薬の純度補正も行って下さい。粉末の試薬は水分を含んでいる可能性があるため,乾燥したものを秤量するようにして下さい。試薬の乾燥条件は,JIS K 8001試薬試験方法通則に規定されています。代表的な方法は,105°C程度で1〜2時間加熱し,デシケータに移して放冷後,秤量します。  

実際の試薬の採取量に関しては,イオンクロマトグラフィの技術書等に記載されていますのでそれらも参考にして下さい。  

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Q17:市販されている標準液を使っても良いですか?

A17:イオンクロマト用であれば問題ありませんので,これらを使用して測定用標準液を調製することをお薦めします。
幾つかのイオンに関しては,イオンクロマト用標準液が幾つかの試薬メーカーから販売されています。これらの標準液は計量法に基づいた値付けがされ,イオンクロマトを用いて不純物の妨害がないことが確認されていますので安心して使用することができます。  

一般的に測定対象となる陰イオン及び陽イオンに関しては,1000mg/Lのイオンクロマト用標準液が販売されています。これらは純水で調製されていますので,目的の濃度になるよう適宜採取・混合・希釈して使用して下さい。但し,表示されている値は標準液が作製された時の値ですので,開封後は変化していないという保証はありません。特に,変化しやすい亜硝酸イオン,フッ化物イオン,アンモニウムイオンに関しては,濃度変化する可能性があることを頭に入れておいて下さい。そのため,開封後は冷暗所保管とし,有効期限を厳守するようにして下さい。  

また,種々のイオンを混合した混合標準液も市販されています。これらは各メーカーの分離カラム検査時の濃度で調製されています。従って,分離カラムの性能確認としては最適です。但し,これらの濃度比は,実試料の濃度比とは大きく異なっているはずですので,混合標準液を用いて検量線を作製した場合には,実試料中の濃度が検量線を逸脱してしまう恐れがあります。このような場合には,1000mg/Lの個別イオンの標準液を用いて実試料の濃度比に合わせた混合標準液を調製するようにして下さい。  

イオンクロマト用標準液が販売されていないイオンに関しては,基本的に粉末の試薬を用いて測定し自身で調製する必要があります。  

尚,ほとんどの遷移金属に関してはイオンクロマトに適した標準液を入手することは困難です。これらは原子吸光用として調製された標準液ですので,0.1 mol/Lもしくは1 mol/Lの硝酸で調製されています。従って,多成分の混合標準液を調製した場合には試料溶液中の硝酸濃度が高すぎて,ピーク形状の変形が生じることがあります。このような場合には,粉末の試薬を用いて測定し自身で調製する必要があります。

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Q18:標準溶液はどれくらいの期間使用可能ですか?

A18:基本的に測定用標準液は使用時調製です。
保管条件によって異なりますが,無機イオンの1000mg/L個別標準液の使用期間は6ヶ月程度と考えて下さい。  

1000mg/Lの個別標準液は高濃度ですので,組成変化もしにくく,環境からの汚染度合いも低いため,冷暗所保存であればかなり長期間保存できます。弊社の経験では,ハロゲン化物イオン,硫酸イオン,アルカリ金属イオン,アルカリ土類金属イオンは半年〜1年間使用可能でしたが,亜硝酸イオン,リン酸イオン,アンモニウムイオンの個別標準液は,半年以上経過したものでは若干の減少が認めらました。また,数十mg/Lレベルの個別標準液は,1ヶ月程度は十分使用可能でした。  

以上は弊社条件下における個別標準液における結果ですので,すべての標準液に当てはまるという訳ではありません。開封時,採取時に汚染される可能性もあります。従って,一定期間毎に濃度変化がないことを確認するようにして下さい。  

1mg/L以下の標準液,及び混合標準液は,使用時調製することを前提として下さい。  

上記は一般的な無機イオン標準液の保存期間の目安として述べたものですが,酸化されやすいイオン,揮発性の高いイオン,有機酸イオン,アミン類等は基本的に保存しないようにして下さい。組成変化やカビの発生等の問題があります。  

尚,購入された市販標準溶液は,容器に記載される期限を厳守して下さい。

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Q19:測定終了後の装置はどのような処置をしたら良いですか?

A19:基翌日あるいは近々に使用するのであれば特別な処置は入りません。
短期間では,通常の測定条件の溶離液が封入された状態で放置されても,分離カラムや装置に影響を与えることは全くありません。
装置を停止するための基本操作は以下の通りです。

①溶離液流量を測定時の半分に下げて下さい。
②カラム恒温槽を切り,分離カラムを室温まで戻して下さい。
③分離カラムの温度が下がったら,ポンプの送液を停止して下さい。
④電源を切り,お帰り下さい。

上記操作を完了するには10〜20分必要とします。この操作の間は,カラム恒温槽の蓋も開けられますので,配管接続部,カラム出入り口,検出セル部等での液漏れや塩類の析出の有無を確認して下さい。

また,上記停止操作に入る前に,インジェクタやオートサンプラから純水を注入してクロマトグラムを測定しておくと,インジェクタやオートサンプラの洗浄と共に,汚染の有無の確認をすることができます。

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Q20:暫く装置を使用する予定はありません。どのようにしておいたら良いでしょうか?

A20:通常の装置停止を行った後,装置の洗浄を行います。分離カラムは取り外し,密栓して冷暗所に保管してください。
溶離液や再生液を封入したまま放置しておくと,塩の析出やカビの発生等の問題が発生します。これらは次回使用時において,流路や分離カラムの詰まり,プランジャーシールの削れ,チェックバルブの動作不良,等の発生が心配されます。

また,再生液に使用する硫酸は揮発しませんので,長期保管の間に水分が飛び濃度が高くなってしまいます。接液部に使用しているPEEKは濃硫酸に犯されますので,この点からも好ましくありません。

長期間装置を使用しない場合には,通常の停止操作を行った後,必ず以下の操作を行って下さい。

①通常の停止操作を行う。
②分離カラムを取り外し,充填剤が乾燥しないようエンドフィッティングをきちんと閉めた状態で冷暗所に保管してください。
③溶離液,再生液ボトル中の残液捨て,ボトルを洗い,純水を入れて下さい。
④分離カラム上下の接続ネジをユニオンで接続して下さい。
⑤ポンプ送液を1mL/minで開始し,約1時間送液をして下さい。
⑥1ヶ月以内の放置であれば,上記操作終了後,電源を切ってお帰り下さい。

1ヶ月以上装置を使用しない場合には,配管内をエタノールやイソプロピルアルコールで置換しておくと,カビの発生を抑えることができます。但し,100%のアルコールは,サプレッサに流すことはできませんので,サプレッサのラインは切り離した後,インジェクタ出口と検出器入口とをユニオンで接続して送液して下さい。

可能であるならば,1ヶ月に1回くらい純水を送液すると,次回使用時における立ち上げトラブルを解消することができます。

分離カラムを1ヶ月以上保管する場合には,各分離カラムの取扱説明書に従って作業を行って下さい。約1ヶ月毎に新しい溶離液を通液すると,保管中でのカラム性能の低下が起きにくくなります。

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