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Q21:有機溶媒を含む溶離液はどのようにして調製しますか?

A21:有機溶媒と塩 (酸) 水溶液を別々のメスシリンダに規定量秤採り,混合して,溶離液とします。
有機溶媒を含む溶離液は,20% CH3OH / 80% 5 mM Na2CO3,あるいはCH3OH / 5 mM Na2CO3 = (20/80) と表記されます。

例えば,上記の溶離液を1000 mL調製する場合,CH3OH 200 mLと5 mM Na2CO3 800 mLをそれぞれ別のメスシリンダに秤採り,溶離液ボトルに入れて混合します。この方法で調製された溶離液中のCH3OH濃度は20%であるように思われますが,溶離液の最終的な容積は1000 mLにはなりません。CH3OHと水を混合すると混合後の容積はそれぞれの容積を足したものより小さくなります。例えば,CH3OH 500 mLと5 mM Na2CO3 500 mLを混合した場合,混合後の容積は約960 mLしかありません。正確な有機溶媒濃度の溶離液を調製するのは困難なのです。

そこで,溶離液調製の再現性を確保するため,それぞれの規定量をメスシリンダで秤採り,混合するという方法が一般に用いられます。
有機溶媒を含む溶離液を調製した場合,均一に混合されていないと,保持時間が変動してしまうことがありますので十分に混合しておかなければなりません。また,発熱して気泡が発生しやすくなる場合があります。そのため,混合後にスターラで攪拌する,超音波をかける等の対応をしておくとトラブルの発生を抑えることができます。

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Q22:分離カラムが劣化したかどうかの判定基準はありますか?

A22:近接ピークとの分離が悪くなったら劣化したと判断できます。定量的に判断する方法もあります。
カラム性能が悪くなった場合には,ピーク幅が大きくなる,ピークが割れる (ショルダーが出る),保持時間が短くなる,といった症状が出ます。

その結果として,近接するピークとの分離が悪くなります。これらは,クロマトグラムから判断することができます。分離カラムの使用開始時に混合標準液のクロマトグラムを測定しておけば,クロマトグラムを重ね合わせることで,これらの変化を把握することができます。分離カラムの開始時,及び定期的に混合標準液の測定をすれば,カラム性能の経時的変化を把握できます。

また,クロマトグラムから理論段数,ピーク幅,分離度,保持時間 (保持指数) 等のパラメータを読みとれば,カラム性能の定量的な指標として比較評価することができます。
尚,購入時に添付されている試験成績書は,通常分離カラムのみのクロマトグラムから求めた値ですので,比較を行う場合には,ガードカラムをはずして測定して下さい。

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Q23:サプレッサーに陽イオン分析用の溶離液を流してしまいました。大丈夫ですか?

A23:速やかに純水を通液して洗浄した後,陰イオン分析システムに変更して標準溶液の分離・検出状態を確認してください。
陰イオン分析に用いるサプレッサーには陽イオン交換樹脂が充填されていますが,陽イオン分析に用いる溶離液が通液されても性能が低下する恐れはほとんどありません。しかし,念のため性能を確認して下さい。性能確認を行うには,サプレッサーの3つのポートすべてに純水を各々約10 mL通液した後,陰イオン分析システムに変更して下さい。ベースラインが安定したら標準溶液を測定し,性能の低下がないことを確認して下さい。尚,サプレッサーには3つのポートがありますので,標準液の測定は3回行い,それぞれのクロマトグラムに差異がないことを確認して下さい。

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Q24:室温変化以外のベースライン変動の原因はなんですか?

A24:カラムや流路の汚染,装置の故障等が考えられます。
ベースラインが不安定となる要因としては幾つかあげることができますが,まず,装置に関わる問題か分析条件や試料に関わる問題かを判断する必要があります。

①状態の確認
分離カラムを取り外し,分離カラムの代わりに抵抗管 (内径0.1 mm,長さ2〜5 mの配管で,少なくとも2 MPa以上の圧力がかかるもの) を取り付けて送液を行って下さい。これで安定するならば,装置の問題ではないと考えられます。さらに,サプレッサを取り外し,同様の操作を行って下さい。この状態で安定していれば,装置の問題でないと判断して良いと思います。

②配管の洗浄
上記操作を行ったとき,ベースラインが不安定,あるいはノイズが出るという場合には,十分脱気した純水を1 mL/minで30分程度通液した後,十分脱気した2-プロパノールを1時間程度通液して配管を洗浄して下さい。その後,純水を30分程度通液し,新に調製した溶離液に変更して,①状態の確認を行って下さい。これで安定すれば配管の汚染,あるいはポンプあるいは検出器に気泡が入っていたことが原因です。

③カラムオーブンの確認
②の操作を行ったあとも安定しないようでしたら,恒温槽のスイッチを切った状態で確認して下さい。ベースラインが安定した場合には,恒温槽の温調機能の故障と考えられます。この場合には,速やかにメーカーにお問い合わせ下さい。

④検出器セルの洗浄
③の操作を行った時,恒温槽のスイッチを切っても安定していないようでしたら,検出器のトラブルかもしれません。まず,検出器セルの電極洗浄を行って下さい。
分離カラム及びサプレッサを取り外し、抵抗管を取り付け、純水を1 mL/minで30分程度通液した後,1〜2 Mの硝酸を1時間程度通液して電極を洗浄して下さい。その後,純水を30分程度通液し,新に調製した溶離液に変更して,①状態の確認を行って下さい。これで安定すれば,検出器電極表面の汚染が原因と考えられます。これでも安定しない場合には,検出器の電気系の可能性がありますので,速やかにメーカーにお問い合わせ下さい。

⑤カラムの洗浄
①状態の確認の際,分離カラムを取り外した状態でベースラインが安定するようでしたら分離カラムが原因と考えられます。分離カラムの洗浄方法に関しては,カラムの取扱説明書を参考にして下さい。分離カラムの洗浄を頻繁に繰り返すとカラム性能が低下する恐れがありますので,まずは,ガードカラムを取り外し,ガードカラムだけを洗浄してみて下さい。カラム洗浄後,通常の状態に戻してベースラインが安定したならば,カラムの汚染と考えて良いでしょう。汚染原因は主に試料ですので,試料の前処理方法を検討するようにして下さい。

⑥サプレッサーの洗浄
分離カラムが原因でなかった場合には,サプレッサーの洗浄を行って下さい。サプレッサーは有機溶媒で洗浄することが可能ですので有機物の汚染も除去することができます。洗浄方法の詳細に関してはメーカーにお問い合わせ下さい。

以上の作業を行った後もベースラインが不安定である場合には,速やかにメーカーにお問い合わせ下さい。

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Q25:以前より保持時間が早く (遅く) なりました。どうしてですか?

A25:溶離液組成の変化またはカラム性能の低下が原因と考えられます。
保持時間の変化してしまう原因としては,溶離液組成の変化,カラム性能の低下があげられますが、この他にも,ポンプ送液流量の変化,カラム温度の変化,試料注入量の変化等が考えられます。

まず,原因を特定するため溶離液の再調製を行ってみて下さい。溶離液濃度が規定の濃度より薄い場合には保持時間は増加し,逆に濃い場合には減少します。炭酸系や水酸化物系移動相の場合には,調製後時間が経過すると空気中から炭酸ガスを吸収してしまいます。その結果,溶離液の溶離力が低くなり,保持時間が増加します。

溶離液の再調製を行っても保持時間が変化しているようでしたら,廃液チューブからの廃液の流量をメスシリンダとストップウォッチを用いて計測して下さい。設定流量通りに流れていない場合には,チェックバルブの洗浄・交換,プランジャーシールの交換などを行って下さい。

溶離液流量も設定値通りであった場合には恒温槽温度を確認して下さい。一般に,カラム温度が高くなると保持時間は減少し,逆に低くなると増加します。但し,硫酸イオンやリン酸イオンは,カラム温度が高くなると保持時間が増加します。恒温槽内に温度計を入れ,30分程度放置した後,恒温槽の蓋を開け,速やかに温度を読みとって下さい。設定温度と異なっているようでしたら恒温槽の修理が必要です。

以上の操作を行った後も保持時間が変化しているという場合には,分離カラムが原因と考えられます。一般に,カラム性能が低下した場合には保持時間が減少します。充填剤自身の劣化や試料中の夾雑成分の吸着が生じた場合には,分離に寄与するイオン交換基が減少しますので,保持時間は減少してしまいます。逆に,分離カラムが原因で保持時間が増加することはまれですが,充填剤に吸着した成分によって特異的な相互作用が生じると保持時間が増加してしまう恐れがあります。分離カラムが原因であると判断された場合には,取扱説明書に従い,適切な方法でガードカラム及び分離カラムを洗浄し,それでも回復しないようでしたらガードカラムあるいは分離カラムを交換してください。

尚,通常分析の場合には問題になることはないと思いますが,試料注入量を変化させると,試料注入量に比例して保持時間が変化します。例えば,溶離液流量0.8 mL/minで測定している時に,試料注入量を20 µLから500 µLに変更すると,下記の計算の通り保持時間が大きくなります。
(500 [µL] - 20 [µL]) / 0.8 [mL/min] / 1000 = 0.6 [min]

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