Q26:ピーク割れやショルダーが出たりしました。どうしてですか?
A26:カラム性能の低下が主な原因と考えられます。
ピーク形状が変形する原因としては,カラム性能の低下が真っ先に考えられますが,試料濃度が高く過負荷であったり,特異的成分が吸着して二次的な分離機構が働いたりして起きる場合もあります。また,配管や接続部でのデッドボリュームもピーク割れ等の原因となります。
原因を特定するため,まず,カラム性能を確認できるような混合標準液の測定を行って下さい。得られたクロマトグラムから,的特定成分ピーク形状だけでなくすべてのピークにピーク形状の変形が生じているのか,保持時間や分離状態が正常なのか等も確認し,分離カラム使用開始時のクロマトグラムと比較して下さい。ついで,ガードカラムを取り外し,分離カラムだけで同様の測定を行い確認して下さい。ガードカラムを取り外した状態でピーク形状が戻った場合には,ガードカラムが原因ですので適切な洗浄あるいは交換を行って下さい。
ガードカラムをはずした状態でもピーク形状が変形している場合は,まず配管のデッドボリュームを確認して下さい。試料溶液が通過する各接続部をはずし,配管がコネクタの奥まできちんと入っていることを確認して下さい。デッドボリュームがあった場合には,正常な状態にして接続し直した後,再度クロマトグラムを測定して確認して下さい。
以上の操作を行った後もピーク形状の変形がある場合には,分離カラムが原因と考えられます。特定成分だけにピークの変形がある場合には,試料中の何らかの成分が充填剤に吸着し,二次的な相互作用が生じたためと考えられます。この場合には洗浄によって回復する場合があります。分離カラムの洗浄は取扱説明書を参考に行って下さい。
一方,すべての成分でピークの変形が生じている場合には,分離カラムの先端にデッドボリューム (充填剤のへこみにより生じた空間) が発生している可能性があります。このようなデッドボリュームが生じている場合には,カラム性能を回復させることはできませんので,分離カラムを交換して下さい。
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Q27:特定のイオンだけ出なくなってしまうことはありますか?
A27:陰イオン分析においては試料中の金属イオンの吸着・蓄積によるピークの減少や消失が起こることがあります。
試料溶液の液性により酸化あるいは還元されてピークが消失するということがあります。このような場合には,標準溶液の測定を行えば試料溶液中での変化によるものかの判断ができます。
しかし,標準溶液を測定しても特性イオンのピークが出ないという現象も起こりえます。特に,重金属イオンを含む試料中の陰イオン分析の場合には,幾つかのイオンのピークが減少する,あるいは消失するといった現象が見られます。
重金属イオンはアルカリ性溶液中で沈殿しやすい水酸化物を形成します。陰イオン分析で用いる炭酸系溶離液中では水酸化物あるいは炭酸塩が生成し,カラム内に沈殿・蓄積してしまいます。このような金属水酸化物は,リン酸イオン,フッ化物イオン,ホウ酸イオン等と錯体を形成するため,これらのイオンのピークが徐々に小さくなり,最終的にまったく出なくなるといったことが起こります。また,ピーク形状も変形して特定ピークだけがテーリングピークとなる,特定ピークだけが保持時間が延びるという例もあります。
一般に,このような重金属の吸着・蓄積はガードカラムの先端で生じますので,ガードカラムをはずして分離カラムだけで分離を確認してみて下さい。ピークが出るようになればガードカラムを洗浄あるいは交換して下さい。
分離カラムの洗浄は各カラムの取扱説明書に従って下さい。カラム性能の変化が金属に基づくと推定される場合には,0.1〜0.2%のEDTA-2Na水溶液を,通常の半分程度の流量で数時間送液すれば性能回復できる可能性があります。EDTA-2Na洗浄を行う場合には,サプレッサをはずして下さい。また,EDTA洗浄後は,溶離液を通常の半分程度の流量で数時間送液し,EDTAを完全に洗い流した後,サプレッサを接続して下さい。目次へ戻る
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Q28:ポンプが液漏れしています。どのように対処したら良いですか?
A28:プランジャーシールの交換を行って下さい。
液漏れが生じている場合には,カラム圧力が正常の値より低くなり,保持時間が長くなっているはずですので,まずこれらを確認して下さい。
ポンプ周辺での液漏れが確認されたら,まず,目視で液漏れ箇所を探して下さい。接続ネジ部であったばあいには,各接続ネジをしっかり締め直して下さい。
接続ネジを締め直してもポンプヘッド周辺での液漏れが止まらない場合には,プランジャーシールの摩耗が原因と考えられます。プランジャーシールは溶離液がポンプの裏側 (駆動機構がある部分) に漏れ込まないようにするためのリング状の部品です。リングの内側は常にプランジャーに接しています。つまり,使用しているうちに,プランジャーによって削られてしまい,最終的には液漏れが発生してしまいます。
プランジャーシールの摩耗は溶離液中の塩濃度が高いほど早く起きます。プランジャーシール裏側に染み出た溶離液が乾燥し,結晶が析出してプランジャーシールを傷つけます。当然,ポンプを乾燥させてしまうと,同様の現象が生じます。従って,ポンプを長期間使用しない時には,純水で十分洗浄した後,2-プロパノール等に置き換えておくことをお薦めします。
プランジャーシールは消耗品ですので,予備として1〜2個は用意しておくようにして下さい。プランジャーシールの交換方法は取扱説明書を参照して下さい。目次へ戻る
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Q29:周期的なノイズが出るようになりました。どうすれば良いですか?
A29:まず,アウトレットバルブ及びインレットバルブ(ポンプの逆止弁)の洗浄を行ってみて下さい。
一般に,細かい周期的なノイズはポンプが原因と考えられます。ポンプのアウトレットバルブ及びインレットバルブが正常に機能していない場合には,プランジャーで押し出そうとした溶液が吸い込み側のほうに戻ってしまいます。そのため,圧力変動やベースラインノイズが発生します。
発生したベースラインノイズがポンプに由来しているかどうかを確かめて下さい。ポンプが原因であればポンプのプランジャーの動きと同期しているはずです。ポンプヘッドに触るとプランジャーの動きを振動で感じることができます。この駆動周期と同期していればポンプ由来であると判断できます。
主な原因は,アウトレットバルブ及び(あるいは)インレットバルブの汚れ,気泡の混入,粒子の混入があげられます。このような場合,十分脱気した2-プロパノールを通液することで解消できる場合があります。次の操作を行ってみて下さい。
分離カラムを取り外し,分離カラムの代わりに抵抗管 (内径0.1 mm,長さ2〜5 mの配管で,少なくとも2 MPa以上の圧力がかかるもの) を取り付けて下さい。十分脱気した純水を1 mL/minで30分程度通液した後,十分脱気した2-プロパノールを1時間程度通液して配管を洗浄して下さい。その後,純水を30分程度通液し,新に調製した溶離液に変更して,抵抗管が付いている状態でノイズの確認を行って下さい。
これでノイズが消えなければ,アウトレットバルブ及びインレットバルブのブロックをポンプヘッドから取り外し,純水が入ったビーカーに入れて,20分位超音波をかけて下さい。その後,2-プロパノールに代えて同様に20分位超音波をかけて下さい。アウトレットバルブ及びインレットバルブのブロックをポンプヘッドに付直し,上記の抵抗管を用いるノイズ確認試験を行って下さい。
上記確認試験後もノイズが消えないようでしたらアウトレットバルブ及びインレットバルブバルブやプランジャーシールの交換が必要です。アウトレットバルブ及びインレットバルブバルブやプランジャーシールの交換は取扱説明書に従って下さい。これらの交換に関して不安がある場合には,メーカーに問い合わせて下さい。
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Q30:不規則なノイズが出るようになりました。どうすれば良いですか?
A30:装置自体のトラブルかもしれません。まず,カラムをはずした状態,送液を止めた状態でもノイズが出るかを確認して下さい。
ノイズの発生状態からその原因を特定することは困難ですが,一般に,周期的な細かなノイズはポンプ由来,不規則ノイズは分離カラムあるいは電気系由来であるといえます。
不規則ノイズの原因としては,分離カラムからの粒子状溶出物,検出器セルの汚れや粒子の混入,電気的ノイズの発生,外部機器からの電気的ノイズ等が考えられます。
不規則ノイズが発生した場合には,まず送液を止めた状態でベースラインをモニタリングして,ポンプ由来でないことを確認して下さい。
その後,分離カラムを取り外し,分離カラムの代わりに抵抗管 (内径0.1 mm,長さ2〜5 mの配管で,少なくとも2 MPa以上の圧力がかかるもの) を取り付けて,送液を行って下さい。分離カラムを取り外すことにより,ノイズが無くなれば,分離カラムが原因であるといえます。分離カラムから粒子状物質が溶出している恐れがありますので,別の分離カラムに交換してノイズの状態を確認して下さい。元の分離カラムが原因であった場合には,分離カラムを交換して下さい。
ノイズの原因がポンプ,分離カラム以外であった場合には,検出器,電気系が原因であると考えられます。これらに関しては,装置に関する詳細な知識が必要となりますので,速やかにメーカーにお問い合わせ下さい。
尚,イオンクロマト装置の周囲に設置された機器の影響で,ノイズが出たり,ベースライン変動やドリフトが生じることもありますので,念のため,設置場所を変えて,上記の確認試験を行って下さい。
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