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Q31:イオンクロマトで使用できない溶媒はありますか?

A31:分離カラムや溶接部を侵すものは使えません。
イオンクロマトは基本的に希薄な塩や酸の水溶液を流すように設計してあります。イオンクロマトとして使用する場合には,0.1 mol/L以下の塩や酸の水溶液,あるいはこれらに水溶性の極性溶媒 (アセトニトリルやメタノール) 等を添加して使用します。

しかし,水に溶解するといっても,酸化性や還元性の薬品 (過酸化水素水,水素化ホウ素ナトリウム等) や高濃度の酸 (濃硫酸,濃硝酸,濃過塩素酸等) は,分離カラムや接液部材質 (PEEK: ポリエーテルエーテルケトン) を侵しますので,使用することはできません。

また,イオンクロマトとHPLCの基本構成は同一ですので,イオンクロマトをHPLCとして使用することが可能ですが,接液部に使用しているPEEK を侵すような溶媒は使用することができません。特に,ジクロロ酢酸,ジクロロメタン,クロロホルム,テトラヒドロフラン,N,N-ジメチルスルホキシド等はPEEKを侵し,強度を低下させ配管が破裂し溶液が飛散する恐れもあり非常に危険です。絶対に使用しないようにして下さい。

分離カラムに通液可能な溶液や範囲に関しては,各分離カラムの取扱説明書をご参照ください。不明な場合は,メーカーにお問い合わせください。

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Q32:余っている溶離液に注ぎ足して使っても構いませんか?

A32:使い古しの溶離液は捨てて,溶離液を調製し直して下さい。

イオンクロマトグラフィの溶離液は希薄な水溶液ですので,組成変化や環境からの汚染を受けやすいという問題があります。つまり,以前に使用した溶離液の残りということは,組成変化や汚染された溶離液であるということになります。余った溶離液に新しく調製した溶離液を注ぎ足すというような方法で繰り返し使用していると,保持時間変動,ベースライン変動,未知ピークの出現等のトラブルの他,カラム性能の低下,圧力上昇,流路汚染等のトラブルも引き起こす恐れがあります。

以上のような理由から,注ぎ足すことは絶対に止めてください。使い古しの溶離液は捨てて,新規に調製した溶離液を十分洗浄した溶離液瓶に入れて使用するようにして下さい。

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Q33:新品の分離カラムを使用するとき注意点はありますか?

A33:測定を始める前に,溶離液で十分な平衡化を行って下さい。
購入したての分離カラムをはじめて使用する場合,充填剤から何らかの成分が溶出してくる可能性があります。また,分離カラム出荷時の封入溶液が溶離液と異なっている場合もあります。そのため,通常の分析時よりも分離カラムの平衡化時間を長めにとるようにして下さい。

実際の操作としては,分離カラムを装置に接続し,分離カラム出口は装置・サプレッサに接続せず、別の配管を接続してください。分離カラムからの廃液はビーカー等に受けるようにしてください。この状態で,溶離液流量を通常分析時の半分程度にして送液を開始して下さい。1時間程度送液後,一般ポンプを止め,通常分析と同じように装置に接続して下さい。ベースラインが安定化したら測定可能です。

分離カラムをはじめて使用する場合には,標準試料 (分離カラムに添付されている試験検査クロマトと同じ濃度のものが最適です) を測定し,性能確認を行って下さい。また,この時のカラム圧力も記録しておいて下さい。その後の性能変化の確認やトラブル発生時の参考となりますので,データは必ず保管しておいて下さい。

※ 一般に分離カラムは性能保証をしていません。はじめて使用する時の性能確認は重要です。この時点で何らかの問題があった場合には,速やかに分離カラムメーカーに問い合わせをして下さい。

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Q34:分離カラムは洗浄できますか?

A34:充填剤に吸着した成分の多くは洗浄可能ですが,カラム性能の低下を引き起こす恐れもありますので注意が必要です。
充填剤に強く保持される成分が吸着すると,保持時間の減少,分離能の低下,ピーク形状の変形等のカラム性能が低下することがあります。
分離カラム洗浄の基本的考え方は,溶離力の強い溶液 (洗浄液) を通液して,吸着成分を分離カラムから溶出させるというものですが,吸着した成分により洗浄液の種類が異なります。これら洗浄液の選択や洗浄方法の詳細に関しては,取扱説明書に従って下さい。

分離カラムに充填されているイオン交換樹脂は,緩衝液の種類,塩濃度,有機溶媒濃度等を変えると膨潤・収縮しますので,充填剤の充填状態が変化してしまうことがあります。つまり,溶離力の強い溶液を繰り返し通液していると,目的とは逆にカラム性能の低下を引き起こしてしまう恐れもありますので注意して下さい。

また,ガードカラムを使用している場合には,強く保持される成分はまずガードカラムに吸着しますので,分離カラムは正常である可能性もあります。ガードカラムを付けたまま洗浄すると,ガードカラムに吸着した成分が分離カラムに入り込み,分離カラムの性能を低下させてしまう恐れがあります。従って,汚染が生じたと思われる場合,ガードカラムを取り外して,分離カラムの性能確認を行って下さい。分離カラムが正常であれば,ガードカラムのみ洗浄を行うようにして下さい。

以下に,基本的な洗浄方法を記述しますが,カラム洗浄を行う場合には必ずサプレッサーを外して,洗浄液がサプレッサーに入らないようにして下さい。洗浄するカラムの出口には廃液瓶への配管を接続して下さい。

多価イオン
イオン交換モードではイオンの価数が大きいほどイオン交換樹脂に強く保持されます。このような多価イオンも長時間通液していればいつか溶出してきます。しかし,このようなイオンを含む試料を次々注入していると,これらの多価イオンが分離カラム内に蓄積されて,他のイオン保持時間が減少してしまいます。多価イオンが吸着されている場合には,通常の溶離液よりも濃度の高い (2倍程度) 溶離液を通液すれば洗浄することが可能です。この方法はカラム性能を低下させる恐れが少ないため,時々この方法で洗浄すると良いと思います。また,ガードカラムの使用をお薦めします。ガードカラムだけを時々洗浄すれば,分離カラムの性能を維持させることができます。

有機物
イオン交換樹脂にはイオン以外にも有機物が吸着します。特に,疎水性 (水に溶けにくい) 有機物は強く保持されます。このような有機物の吸着度合いは充填剤の基材樹脂により大きく異なり,ポリスチレンのような疎水性の高い基材樹脂を用いている充填剤ほどその度合いが高くなります。有機物が吸着した場合には,溶離液にアセトニトリルやメタノールを混合した溶液を送液して洗浄します。有機溶媒の添加量は分離カラムによって大きく異なりますので,分離カラムの取扱説明書をよく読み,有機溶媒の種類と濃度を設定して下さい。但し,イオン交換樹脂は有機溶媒によって膨潤・収縮しますので,このような洗浄を繰り返し行うと,カラム性能が低下する恐れがあります。
有機物を多く含む試料を測定する場合には,固相抽出カートリッジ等を用いた前処理で取り除くことをお薦めします。また,ガードカラムの使用をお薦めします。ガードカラムだけを時々洗浄すれば,分離カラムの性能を維持させることができます。

高分子化合物
高分子化合物も有機化合物と同様に充填剤に吸着される物が多くあります。高分子が吸着した場合も,有機物のときと同様の方法で洗浄を行います。しかし,高分子化合物を完全に洗浄することが難しい場合も多く,性能が回復しないこともあります。高分子化合物を含む試料の場合には,固相抽出カートリッジ等を用いた前処理で取り除くようにし,さらにガードカラムを使用するようにして下さい。

金属
陽イオン分析においてはあまり大きな問題となりませんが,多価金属を多く含む試料の場合には保持時間の減少等が発生することもあります。このような場合には,通常の溶離液よりも濃度の高い (2倍程度) 溶離液を通液すれば洗浄可能です。
陰イオン分析ではアルカリ性移動相を用いていますので,金属イオンが水酸化物として充填剤表面に沈殿・蓄積されてしまいます。金属の水酸化物が吸着するとリン酸イオンやハロゲンイオンが二次的に吸着して,ピークが小さくなったりでなくなったりすることがあります。このような場合,エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 (EDTA-2Na) を用いて洗浄すると性能が回復することがあります。但し,洗浄する場合には,必ずサプレッサを取り外して下さい。
EDTA-2Naによる洗浄方法は2通りあります。一つは,インジェクタから注入する方法です。0.2〜0.5%の水溶液を調整し,インジェクタから繰り返し注入します。1分程度の間隔で,10回程度注入して下さい。汚染度合いが低い場合にはこの方法で除去可能です。もう一つの方法は,0.1%程度の水溶液を調製して,低流量 (通常の半分程度の流量) で通常の送液と逆方向に数時間程度通液して下さい。

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Q35:サプレッサーの交換はどのようにして行うのですか?

A35:サプレッサーホルダ内のサプレッサーローターを交換して下さい。
メトローム社のサプレッサーは,3つのケミカル式サプレッサーが一体となったカートリッジ式になっています。サプレッサーのカートリッジ (サプレッサーローター) は,白い円筒状のホルダ (サプレッサホルダ) の中に納められています。サプレッサーローターの交換は以下の手順で行って下さい。詳しくは,取扱説明書をご覧下さい。

1. サプレッサーホルダ前面のナット (配管が接続されている外側のキャップ) を手で回して外し,配管の付いた接続ピースを取り外します。
2. PEEKチューブ等をサプレッサーホルダ下部の穴に差し込み,サプレッサーローターを手前に引き出し,取り出します
3. 新品のサプレッサーローターをサプレッサーホルダに差し込みます。その際,サプレッサーローター前面の3つの穴の位置関係が逆三角形になるように差し込みます。
4. サプレッサーホルダに配管の付いた接続ピースを取り付けます。その際,接続ピースの1と書かれた部分が上にくるようにサプレッサーホルダの切れ込みに合わせます。
5. サプレッサーホルダのナットを手で回して取り付けます。最後まで締め込んだら半回転ほど戻します。サプレッサーの交換はこれで完了です。
6. 送液を開始し,液漏れ等が無いことを確認して下さい。

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