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Q6:溶離液はどのような試薬を使って作れば良いですか?

A6:イオンクロマト用試薬もしくは試薬特級以上の試薬を使用して下さい。
可能な範囲で純度高い試薬を入手し,規定量を秤量し,純水に溶解して調製して下さい。

市販の試薬は主成分の純度を基に製品規格を設定しています。例えば,純度99%以上の試薬では,最大1%の不純物が含まれている恐れがあります。この不純物がピーク (負又は正のピーク) として検出されると,測定対象イオンの定量性が損なわれてしまいます。「イオンクロマト用試薬」は,このような問題の発生がないように精製されていますので,この等級の試薬を,最優先に使用して下さい。この等級がない場合には,「試薬特級」を選択して下さい。但し,同一の等級であっても試薬メーカーにより,純度,原料試薬,精製方法等が異なりますので,不純物の影響は異なってきます。問題が発生した場合には,メーカーへの問い合わせが必要です。

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Q7:溶離液の脱気は必要ですか?

A7:脱気は必要です。インライン脱気装置を使用して下さい。

気体が溶け込んでいるような溶離液を用いると,温度変化や圧力変化によって,流路内に気泡が発生して,ノイズやドリフトの発生,検出の妨害となることがあります。従って,十分に脱気して使用して下さい。

脱気方法としては,調製した溶離液に超音波をかけながら (あるいはスターラで攪拌しながら) アスピレータ等を用いて減圧します。但し,長時間減圧状態にしておくと溶離液組成が変化してしまう恐れがありますので,減圧にする時間は1分以内として下さい。

脱気による問題を解消するにはインライン脱気装置を使用することをお薦めします。この装置では連続的に溶離液の脱気を行いますので,溶離液を事前に脱気する必要はありません。但し,有機溶媒を含む溶離液等の場合には脱気効果が低下する場合もありますので,事前に軽く (1分程度) 超音波をかけておくほうが良いと思います。

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Q8:溶離液はどのくらい持ちますか?

A8:溶離液の種類によって異なりますが,基本的には1日で使い切るようにして下さい。

溶離液の使用可能期間は,種類や使用環境によって大きく異なりますので,一概に答えを出すことはできません。基本的には,使用時に調製し,1日程度で使い切って下さい。

イオンクロマトの溶離液は塩濃度が低いため,長期間放置しておくと,組成変化,環境からの汚染,カビの発生等の問題が発生します。また,溶離液ボトルからの溶出といった問題も発生します。
これらは,保持時間の変化,未知ピークの発生,カラム性能の低下等のトラブル発生の原因となります。特に,炭酸系や水酸化物系溶離液の場合には,そのpHが高いため空気中の炭酸ガスを溶解して,pHや組成が変化し易いという問題があります。従って,溶離液は調製後1日程度 (最大でも2日) で使い切るようにして下さい。

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Q9:溶離液はどのように調整しますか?

A9:試薬特級以上の粉末試薬もしくはイオンクロマト用試薬を使用して、溶離液を調製して下さい。
イオンクロマトの溶離液は希薄な水溶液ですので,長期使用することができません。しかし,毎回粉末試薬を秤量して調製するのは大変です。そこで,10〜100倍濃い溶離液原液を調製し,使用時に希釈して使用するという方法があります。

例えば,陰イオン分析の溶離液として3.2 mmol/L Na2CO3/1.0 mmol/L NaHCO3を使用している場合には,100倍の0.32 mol/L Na2CO3/0.1 mol/L NaHCO3混合原液を調製し,使用時に100倍希釈して使用するという方法をとることができます。また,個別の100倍原液を調製し,0.1 mol/L Na2CO3を32 mL,0.1 mol/L NaHCO3を10 mL採取し,100倍希釈するという方法も可能です。

硝酸や硫酸を用いる溶離液や再生液も,濃厚原液から希釈する方法を用いることができます。

試薬の純度や調製過程での汚染が測定に影響を及ぼす可能性がある場合には,液体試薬として販売されている「イオンクロマト用試薬」を最優先に使用して下さい。

粉末試薬から調整した溶離液原液も長期保管すると,組成変化や汚染が生じる恐れがあります。溶離液原液は,密閉性の高い樹脂製の容器に入れて保管してください。このような原液自体は3ヶ月以上保管できますが,開封時に環境からの汚染が生じることがありますので,大量に調製することはせずに1ヶ月以内に使い切るようにするのが安全です。但し,有機酸系溶離液はカビが発生する恐れが高いため,濃厚溶液から溶離液を調製することはお薦めできません。

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Q10:立ち上げから何分で測定可能ですか?

A10:測定条件によっても異なりますが,一般的な濃度レベルを測定する場合には30分〜1時間です。
測定可能かどうかの判断は,ベースラインが安定化したかどうかで決まります。高感度での測定が要求されない (mg/Lレベルでの測定) 場合には30分から1時間程度で試料注入が可能なベースラインを得ることができます。一方,µg/Lレベルの測定を行うには,1時間半〜2時間かかることもあります。

一般に,サプレスト方式の陰イオン測定条件では,バックグランド電気伝導度が低いため,分離カラム内の液が置き換わって平衡状態となればバックグランド電気伝導度も安定しますので,30分〜1時間程度で測定可能となります。

一方,ノンサプレッサ方式の陽イオン分析では,バックグランド電気伝導度が高いため,分離カラムの平衡化時間よりも,機器の温度平衡や環境温度の安定度に大きく依存します。そのため,安定化するまで1時間〜1時間半程度を必要とします。

高感度測定を必要とする場合には,立ち上げ時間は上記よりも長くなります。バックグランド電気伝導度だけでなく,設置環境の影響も受けやすくなりますので,安定が遅い場合には温度変化の少ない所に移設するようにして下さい。

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