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大学の最初の学期に受けた分析化学の実習では、滴定を何度も行わなければなりませんでした。振り返ってみると、ガラスのビュレットで滴定溶液を慎重に添加したこと、ビュレットを補充する面倒な作業、そして終点を正しく選択していないのではないかという疑念を常に抱いていたことを思い出します

クラス全員が異なる測定結果を出し続けました。当時、私は今ほど経験を積んでいなかったので、その理由はよくわかりませんでした。滴定の経験を10年積んだ今日、私は手動滴定の測定結果は、それを行う人によってかなり大きく左右されることを学びました。ここでは、手動滴定におけるエラーの原因トップと、それを避ける方法を紹介しまいたします。

 

pH-indicators

適切な指示薬の選択

滴定終点の pH 値は、使用する酸と塩基の酸解離定数 (Ka) によって決まるということを、皆さんはどこかで学んだことがあると思います。強塩基を強酸で滴定すると、終点の pH 値は約 7 になります。強塩基を弱酸で滴定すると、終点はアルカリ性の範囲にシフトします。強酸を弱塩基で滴定すると、終点は酸性の範囲になります。これが、酸塩基滴定 (中和滴定) で複数の異なる指示薬が用いられる理由です。しかし、どれを選択すればよいのでしょうか?

 

上の表は、最も頻繁に使用されるpH指示薬を示しています。終点のpHが7付近なのに、クリスタルバイオレット( Crystal violet)やメチルオレンジ( Methyl orange)を指示薬として用いると、正しい測定結果が得られないことは想像がつくでしょう。幸運なことに、ほとんどの規格や標準作業手順書(SOP)には用いる指示薬が指定されています。指示に従えば安全です!

 

色の変化のニュアンスの違い

終点の認識は主観的なもの

終点を認識しようとするとき、問題が生じます。色の変化のニュアンスについて考えたことはありますか?

上の図は、HCl=1 mol/LとNaOH=1 mol/Lの酸塩基滴定(中和滴定)の終点付近を5段階に分けたものです。それぞれの画像とその前の画像との違いは、滴定溶液が1滴追加されていることだけです。この場合の終点はどこでしょうか?

終点に到達したのは、かすかなピンクが見えるだけの写真1か?それとも、色が濃くなる写真3で到達するのか? さらには、ピンク色が最も鮮やかになる写真5なのか? 写真1から写真5までの間に、滴定溶液はわずか4滴しか加えられていません。医薬品分析の定義では1滴は50µLの容量であるため、これは滴定溶液200µL、または塩酸約7.3mgに相当し、非常に大きな誤差となります。

メニスカス

ビュレットの容積を読み取る

ビュレットの正しい読み方を覚えていますか? 足台の上に立ち、メニスカスの値を水平に読むようにしなければなりません。なぜなのか、わかりますか?

容量の読みは、ビュレットを見る角度によって異なります。この例では、読み取る角度によって、実際の値から最大0.2 mL (200 µL)の誤差が生じます。視線が水平からずれればずれるほど、読みは不正確になり、測定結果も不正確になります。平均的な誤差は200 µLと考えてよいでしょう。これは、前の例で示したように、滴定には大きな誤差となります!

客観性と正確性の向上

これらのエラーをなくすにはどうすればよいでしょうか。最も簡単に克服できるのは読み取りエラーです。この問題を解決するには、電動ビュレットを使用します。電動ビュレットを使用する場合は、滴定溶液を入れてボタンを押すだけです。装置が自動的に容量を測定し、デジタル表示します。電動ビュレットを使用すると、結果の客観性が非常に高くなります。

また、分析結果の精度も向上します。分析化学において精度がどれほど重要かは言うまでもありませんが、例を挙げてみましょう。金の純度を90%と判定したとします。しかし実際は99%だったとします。このように偽って金を売れば、大損することになります!

先ほど、指示薬を用いた視覚的な終点認識では、最大 200 µL の誤差が生じる可能性があることを示しました。ビュレットの読み取りが不正確な場合、さらに 200 µL の誤差が生じる可能性があります。電動ビュレットを使用しても、より客観的な終点認識は得られませんが、一滴ごとの最小添加量は減ります。手動ビュレットのように50 µL ではなくなり、使用する電動ビュレットのシリンダー容量に応じて 0.25 µL まで小さくなります。これにより、終点認識による誤差は大幅に減ります。一般的な最小添加量は次のとおりです。

シリンダー容量 [mL] 最少添加量 [µL]
5 0.25
10 0.50
20 1.00
50 2.50

次のステップ: 自動滴定

このコラムで説明したエラーの原因をすべて克服したい場合は、自動滴定に切り替える必要があります。この場合、サンプル中のpH変化を測定する電極と終点を検出するために数学的アルゴリズムを使用します。さらに、電動ビュレットと同じ精度が得られます。

詳細については、関連するコラムをご覧ください。

手動滴定を自動滴定に移行する方法

手動滴定から自動滴定へ切り替える5つの理由

作成者
Kalkman

Iris Kalkman

Product Specialist Titration
Metrohm International Headquarters, Herisau, Switzerland

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